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2019/04/02 15:24

海外マーケットとブランディングコミュニケーション
Vol2. ブランドガバナンス

日経BP社でグローバル解説員としてコラムを連載中の向島湊が海外ブランディングの要旨をわかりやすく伝えます。

海外向けのコミュニケーション設計やコンテンツ制作を通じて、企業のグローバルプレゼンスを既存顧客、潜在顧客、採用ポテンシャル、IR、社内などのステークホルダーに訴求するポイントを解説していきます。

向島 湊(むこうじま みなと)

Minato Mukojima

米国ニューヨーク州立大学芸術学部卒。東京、ニューヨーク、ロサンゼルス、中国を拠点に現地のベンダーと協力して日本企業の海外広告プロモーション、PRブランディング、海外マーケティングの分析、戦略等の一貫した設計に携わる。日系・外資系大手企業のPMO、コンサルタントを歴任。

1. ブランドガバナンスとローカライズのトレードオフ

海外マーケットの声、すなわち現場の声に耳を傾けることが海外ブランディングの重要ポイントだと話しましたが、そこには1つ問題があることに気づくかもしれません。それは、ブランドガバナンスの問題です。

海外マーケットの声に耳を傾けて積極的に意見を取り入れると、日本でのブランドアイデンティティーから徐々に離れてしまう可能性があります。例えば、北米市場のマーケティングは北米に任せる、といった業務上での棲み分けを続けると、ロゴだけ同じで全く異なる印象の会社になってしまうということもありえます。

ローカライズする部分はここからここまで、グローバルレベルでブランドガバナンスする要件はここからここまで、といったように細かい線引きをすることが重要です。またこうした取り決めは、ローカルと本部でコミュニケーションをとる際にも、大きく役立ちます。「ここは変えてはならない」、「ここはマーケットにあわせて変更できる」という共通のコンセンサスがあることが、不必要な議論や衝突を避けることにつながるからです。その分、その企業の企業らしさを生かしながら、どう現地マーケットにローカライズするか、という本来注力するべきトピックに時間を費やせるようになります。

2. 本社チームのブレない方向性

リージョンごとに内容が異なるのは自然なことです。ただし、リージョンごとにローカライズされすぎると全体としてのガバナンスや統一感、一貫性を失ってしまいます。そのあたりの舵取りは本社のチームの仕事です。

その企業のビジョン、そして企業がどこに向かおうとしているのか、その企業の顧客に対する不変的かつ普遍的な提供価値や体験は何であるか。こうしたことをよく議論した上で発信していくことが重要です。グローバル企業として一貫性を失うことはブランディング上大きなダメージとなりえます。また一見海外ローカルの意見が正しい場合でも、長期的にみて損失やマイナスの方が多いことは往々にしてあります。そのあたりをしっかりと見極めながら、ローカルチームとよく協力し、グローバルブランディングと向き合っていくことが肝心です。

協力作業をする上では、体制としてDecentralization(権限譲渡)を確立する必要があります。トップマネジメントがこれらの背景をよく理解して現場が働きやすくしなければなりません。またもしまだその体制や理解がトップにないのであれば、現場から提案していくことも大切です。グローバルブランディングにおけるコミュニケーションは、トップと現場、そして日本と海外が縦横的に有機的につなげる作業でもあるのです。

3. 最後に

海外マーケットを成功させるには、ブランドガバナンスとローカルチームを生かすこと。グローバルで一貫した企業イメージや方向性や分権性を社内で共有し、強固なコミュニケーションネットワーク作りをしていく必要があります。

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